ユネスコ世界文化遺産としても有名なブコビナの五つの修道院。
これらを世に知らしめる原因となったのは、その外壁を覆う美しいフレスコ画の壁画である。
ルーマニア観光のハイライトとも言えるこの世界遺産、見逃してはならないポイントだろう。
実際には8つの修道院が現存しているのだが、
中でも特に壁画が美しい5つの修道院が有名である。
1.「Manastirea Sucevita/スチェヴィツァ修道院」
(但しここは世界遺産には含まれてない)
最大の大きさと敷地を誇る修道院。「天国の梯子」の壁画で有名である。
異端者の顔はすべてトルコ人の顔で描かれているあたり、
当時のオスマン・トルコとの政情を覗えておもしろい。
他には「聖人伝」「エッサイの樹」「最後の審判」などが描かれている。
2.「Manastiri Moldovita/モルドヴィツァ修道院」
ここの壁画の特徴は戦闘場面が描かれていることである。
ペルシャ軍襲来がモチーフなのだが、どう見ても兵士の顔や装備はトルコ軍。
当時のオスマン・トルコへの脅威が垣間見れる壁画である。
3.「Manastiri Arbore/アルボーレ修道院」
小さい規模ながらも美しい壁画が残っている。
ここに描かれているのは「聖人たちの生活」「創世記」である。
4.「Manastiri Humorului/フモール修道院」
ここの修道院の壁画はブコビナ地方修道院群の中で
唯一、壁画を描いた画家の名前が分かっている。
しかし、ここの壁画は保存状態が悪く、判別不能状態なのが残念である。
南面は見ることができ、この絵は「コンスタンチノープルの包囲戦」で、
ここでもまたトルコ人が敗者として描かれていることに注目したい。
5.「Manastiri Voronet/ヴォロネッツィ修道院」
ここの「最後の審判」は修道院群の壁画の中でも最高傑作と称されている。
この絵に対する気合の入り方は入り口の方角さえ変えてしまう程である。
通常キリスト教会堂の入り口はすべて西側に設けられている。東方エルサレムに向かって祭室があり、十字架が安置される為に、入口は西方を向く構造になっている。
しかし、ここの入口は「最後の審判」を描ききる為に西方にはない。
そのような例外をおかしてまでも描ききった「最後の審判」。見ないわけにはいかないだろう。
これらの壁画が描かれた目的は「目で見る聖書」であった。
文字が読めない人々にも壁画を通じて布教したのだ。
この背景には当時の政情が大きく影響している。
当時はオスマン・トルコ帝国の繁栄期であった。バルカン諸国はほとんど支配下にあったのだが、それに背き独立を保っていたモルドヴァ公国は異教徒の外圧に対して住民が結束する為に、キリスト教布教の徹底を図った。
そしてこの壁画たちは描かれたのである。
「最後の審判」で地獄に落ちる者たちの顔がトルコ人の顔で描かれたりしているのは
この為である。
そして、この壁画にはひとつの謎が残る。「ヴォロネツの青」と呼ばれる色だ。
この修道院群を今の世において世界的に知らしめた理由としては、
その色鮮やかな壁画が理由であるが、これはフレスコ技法を用いているからこそ、
400年近く経った今もその美しさを留めている。
その中で多くの壁画の基調を成す青色はその独特な色調故に「ヴォロネツの青」と呼ばれているが、現在の化学力を持って調査しても原料が不明である。
その謎が神秘性に拍車をかける「Manastiri Bucovinei/ブコビナの修道院群」
訪れないわけにはいかない。
各修道院群はブコビナの山々に点在している為、公共交通機関で周ると3日はゆうにかかってしまうだろう。1日で見て周るには車のチャーターがおススメ。
また、この地方などは一般の人々の交通機関はまだまだ「馬車」である。のんびりと馬車を走らすおじさんの素朴な姿を見ると、なにかしらほっと一安心する温かを感じた。
at 2000 09/02 21:52